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Author:gongze
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初めまして宮沢雅宏と申します。
中国の西安において馬賢達老師と
田春陽老師より中国伝統武術である
通備拳を学んでまいりました。
このブログには武術に関する理論やエッセイを掲載してまいります。
本格中国武術教室通備拳斬卸会、現在会員募集中です!
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八極地獄拳
―――もう一つのケンジ―――
第二話 血塗られし必殺拳!その名は八極拳
俺は生き残った。
あのどこのアホが仕掛けたのかも判らねえ地獄の饗宴、そいつに俺は生き残っちまった。
周りのやつらを圧倒するほど俺の身体能力が優れていたのかと言えば、おそらく違う。
あの後また弁当箱が投げ入れられたのだが、俺は争っている奴らの横にあった弁当箱を掠めて盗み食いし、その後はひたすら死んだふりをしていたのだ。
さすがに人数が少なくなってくるとこの手は通用しなくなったが、そこまでまじめに争ってきた奴らというのは体中ボロボロになっててまともに闘えたもんじゃねえ、そんな奴らに俺は悠々ととどめを刺してきたっていうわけだ。
俺だってそんなことしたかねえが、やらなきゃこちらがやられる、極限状態に平時の感性など通用しない。
俺一人が生き残ったところで例の軍服姿の奴らが部屋に入ってきた。
「な,何をするだ―ッ!」
奴らは入って来るや否や俺を鎖でぐるぐる巻きにし後ろ手に手錠をかけた。そして首に縄を付けて俺のことを引っ張る。
「ようし、こちらへ来い。暴れるんじゃねえぞ?」
奴らは縄で俺のことを引きずってどこかへ連れていった。
着いたところは何かの部屋らしい。部屋に入ると中には小柄な老人が一人立っていた。
他の奴らとは違ってタオパイパイみたいな恰好をしている。
「隊長,こいつが今回の選抜者です」
隊長と呼ばれたそのジジイが俺に向かって話しかけてきた。
「よく来たな。」
いったい何なんだこのジジイは?
俺のことをどうしようというんだ?
「まずはお前の置かれている状況を説明してやろう。ここは謎の秘密組織,影の軍隊の本拠地だ。お前はこれから影の軍隊の兵隊となって世界征服のために働くのだ。」
このジジイ,言ってることが完全におかしい。アレが来ちまってるんじゃないだろうな?
「待てこの野郎,なんだよその影の軍隊ってのは?世界征服とか本気で言ってるのか?」
「口のきき方に気をつけんかこのサル吉が―――ッ!」
ボグシャーッ!
隣にいた例の軍服姿の男が俺の頭を鉄パイプでぶん殴ってきた。一瞬雲の上の世界が見えた気がしたが気のせいだったようだぜ。
「まあ待て。あまり強く殴って死んでしまっては元も子もない。せめて殴るときは金属バットを使え。」
そしてジジイは俺のほうに向きなおって話を続けた。
「よし,話してやろう。我が影の軍隊は中国武術史上最強と言われた八極拳を身に付けた兵士の集まりだ。我々は八極拳を軍隊式に暗殺用として進化させた。この八極拳を使って世界中の要人を暗殺し世界を支配するというのが我々の目的だ。お前は八極拳を身に付ける資格があるかを試す選抜に生き残ったというわけだ。」
今更だが本当に頭がおかしいぞ?こいつら。近代兵器を備えてるような相手に拳法で勝てると思っているのか?
「どんなすごい拳法だか知らねーけど現代の銃や戦車やロボットにかなうわけがないだろ?それに俺がお前らに素直に従うと思っているのか?」
「ふむ,お前の気持ちもよく分かる。だがこれを見れば考えも変わるだろう。おい!」
「ハッ!」
カチッ。隣にいた男が手に持っているリモコンのスィッチを押したようだった。すると横の壁が上がっていき中には何やら大きな動物らしきものの姿が見える。
ジジイは不敵な笑みをうかべている。
「さあ,牛だ」
中から出てきたのは体重一tぐらいあるんじゃないかという巨大な黒牛だった。闘牛用だろうか?非常に獰猛で今にも襲い掛かってきそうである。
しかし今は首についた縄で壁につながれているようだ。
「やれ」
「ハッ!」
再び男はリモコンのボタンを押した。すると壁につながれた縄がポトリと落ちた。その瞬間,牛はジジイめがけて猛烈な勢いで突っ込んできた。
うもーーー!
巨大な牛に今にも挽肉にされようとする刹那,ジジイは軽く踏み込んだかと思うと右の拳を牛の額めがけてちょこんと突き出した。
その瞬間,牛の動きがピタリと止まってしまった。そして,
ブシャ―――ッ!!!
牛は目やら耳やら鼻やら体中の穴から血を噴き出して絶命してしまった。
「こ,これは…」
俺は驚愕の余り目の前で起きたことがいまだに信じられずにいた。
「これが八極拳だ。これからお前はこの八極拳を身に付けて世界征服のための鉄砲玉となるのだ。」
俺は感動していた。
す,すげえ,すげえぜ八極拳!こいつがあれば世界を獲れるに違いねえ!
「分かったぜ!俺はあんたたちに従う,いや,従わせていただくであります,押忍!」
「よし,いい返事だ。わしの名は李書文,この軍隊の隊長だ。よく覚えておけ。」
こうして俺は世界征服をたくらむ秘密組織の一員となったのだ。
いずれは出世して悪の大魔王になってやるぜ!
(続く)
―――もう一つのケンジ―――
第二話 血塗られし必殺拳!その名は八極拳
俺は生き残った。
あのどこのアホが仕掛けたのかも判らねえ地獄の饗宴、そいつに俺は生き残っちまった。
周りのやつらを圧倒するほど俺の身体能力が優れていたのかと言えば、おそらく違う。
あの後また弁当箱が投げ入れられたのだが、俺は争っている奴らの横にあった弁当箱を掠めて盗み食いし、その後はひたすら死んだふりをしていたのだ。
さすがに人数が少なくなってくるとこの手は通用しなくなったが、そこまでまじめに争ってきた奴らというのは体中ボロボロになっててまともに闘えたもんじゃねえ、そんな奴らに俺は悠々ととどめを刺してきたっていうわけだ。
俺だってそんなことしたかねえが、やらなきゃこちらがやられる、極限状態に平時の感性など通用しない。
俺一人が生き残ったところで例の軍服姿の奴らが部屋に入ってきた。
「な,何をするだ―ッ!」
奴らは入って来るや否や俺を鎖でぐるぐる巻きにし後ろ手に手錠をかけた。そして首に縄を付けて俺のことを引っ張る。
「ようし、こちらへ来い。暴れるんじゃねえぞ?」
奴らは縄で俺のことを引きずってどこかへ連れていった。
着いたところは何かの部屋らしい。部屋に入ると中には小柄な老人が一人立っていた。
他の奴らとは違ってタオパイパイみたいな恰好をしている。
「隊長,こいつが今回の選抜者です」
隊長と呼ばれたそのジジイが俺に向かって話しかけてきた。
「よく来たな。」
いったい何なんだこのジジイは?
俺のことをどうしようというんだ?
「まずはお前の置かれている状況を説明してやろう。ここは謎の秘密組織,影の軍隊の本拠地だ。お前はこれから影の軍隊の兵隊となって世界征服のために働くのだ。」
このジジイ,言ってることが完全におかしい。アレが来ちまってるんじゃないだろうな?
「待てこの野郎,なんだよその影の軍隊ってのは?世界征服とか本気で言ってるのか?」
「口のきき方に気をつけんかこのサル吉が―――ッ!」
ボグシャーッ!
隣にいた例の軍服姿の男が俺の頭を鉄パイプでぶん殴ってきた。一瞬雲の上の世界が見えた気がしたが気のせいだったようだぜ。
「まあ待て。あまり強く殴って死んでしまっては元も子もない。せめて殴るときは金属バットを使え。」
そしてジジイは俺のほうに向きなおって話を続けた。
「よし,話してやろう。我が影の軍隊は中国武術史上最強と言われた八極拳を身に付けた兵士の集まりだ。我々は八極拳を軍隊式に暗殺用として進化させた。この八極拳を使って世界中の要人を暗殺し世界を支配するというのが我々の目的だ。お前は八極拳を身に付ける資格があるかを試す選抜に生き残ったというわけだ。」
今更だが本当に頭がおかしいぞ?こいつら。近代兵器を備えてるような相手に拳法で勝てると思っているのか?
「どんなすごい拳法だか知らねーけど現代の銃や戦車やロボットにかなうわけがないだろ?それに俺がお前らに素直に従うと思っているのか?」
「ふむ,お前の気持ちもよく分かる。だがこれを見れば考えも変わるだろう。おい!」
「ハッ!」
カチッ。隣にいた男が手に持っているリモコンのスィッチを押したようだった。すると横の壁が上がっていき中には何やら大きな動物らしきものの姿が見える。
ジジイは不敵な笑みをうかべている。
「さあ,牛だ」
中から出てきたのは体重一tぐらいあるんじゃないかという巨大な黒牛だった。闘牛用だろうか?非常に獰猛で今にも襲い掛かってきそうである。
しかし今は首についた縄で壁につながれているようだ。
「やれ」
「ハッ!」
再び男はリモコンのボタンを押した。すると壁につながれた縄がポトリと落ちた。その瞬間,牛はジジイめがけて猛烈な勢いで突っ込んできた。
うもーーー!
巨大な牛に今にも挽肉にされようとする刹那,ジジイは軽く踏み込んだかと思うと右の拳を牛の額めがけてちょこんと突き出した。
その瞬間,牛の動きがピタリと止まってしまった。そして,
ブシャ―――ッ!!!
牛は目やら耳やら鼻やら体中の穴から血を噴き出して絶命してしまった。
「こ,これは…」
俺は驚愕の余り目の前で起きたことがいまだに信じられずにいた。
「これが八極拳だ。これからお前はこの八極拳を身に付けて世界征服のための鉄砲玉となるのだ。」
俺は感動していた。
す,すげえ,すげえぜ八極拳!こいつがあれば世界を獲れるに違いねえ!
「分かったぜ!俺はあんたたちに従う,いや,従わせていただくであります,押忍!」
「よし,いい返事だ。わしの名は李書文,この軍隊の隊長だ。よく覚えておけ。」
こうして俺は世界征服をたくらむ秘密組織の一員となったのだ。
いずれは出世して悪の大魔王になってやるぜ!
(続く)
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松田隆智先生が原作を担当した漫画である「拳児」は八極拳の普及において多大な功績を残しました。そこで私も松田先生に倣って八極拳をテーマとした創作小説を書いてみました。松田先生が生み出した拳児とは似ても似つかぬもう一つのケンジの物語をどうぞご覧ください。ちなみに小説内で使われる武術の技は実際の武術の技とは完全に無関係です。当然小説内の登場人物や事件も完全なフィクションです。
オリジナル小説
八極地獄拳
―――もう一つのケンジ―――
第一話 極悪非道!謎の組織
キキ――ッ
甲高いブレーキ音とともに大型トラックが施設の前に到着した。
ここは中国の内陸部、詳しい場所は分からないが周りは見渡す限り砂漠である。
「よし、入れ」
門衛のチェックが終わると巨大な扉がゴオオという音をたてながら開かれていった。
トラックはその中へとゆっくりと入っていく。
そのまま進んでいくと広大な中庭へ出て、トラックはそこで停車した。正面には要塞のようにそびえる建物が見える。左右には倉庫らしきもの、そして見張り台がある。
トラックの周りに数名の男たちが駆け寄ってきた。皆軍服のような制服に身を包んでいる。
「ようし出て来い」
男たちの一人が荷台の扉を開けた。中には大勢の子供たちがいた、それも皆少年たちだ。
「とっとと出てこねえか!出たらそこに並べ」
男たちの怒声が響く。少年たちは皆一様に怯えた表情だ。自分たちがなぜこんな目に合わなければいけないのか皆目見当もつかないという顔をしている。
「いいか?今日からお前らはここで暮らすことになるんだ。お前らは皆親に捨てられたか、もしくは二束三文で売られた奴らばかりだ。本来だったらゴミとなんの変りもねえんだがそれを俺たちが引き取って面倒見てやろうというんだ、ありがたく思え」
ここに集められた少年の多くは、親に捨てられたり売られたりしたものばかりだった。それだけでなく紛争で親を失ったもの、普通の暮らしをしていたのに誘拐され売られたものまでも混じっている。
そういった少年たちの中にケンジはいた。
彼の名は竹畑賢治、この物語の主人公のケンジである。
「くそ、どこなんだよここ?なんで俺がこんな目に?」
ケンジは途方に暮れていた。
ケンジは中学生である、しかし頭の方はあまりよろしくはなく分数の足し算ができない。かろうじて九九は覚えているので運が良ければ分数の掛け算には正解することもある。しかし通分というものができないので分数の足し算や引き算は壊滅的だった。
スポーツもそれほど得意というわけではないが、なぜかマラソンだけは速かった。小遣い欲しさに神社を見つけては賽銭泥棒を繰り返していたので逃げ足だけは鍛えられていたのだろう。
その日もケンジは隣のさらにその隣の町までくりだして賽銭泥棒を働いていた。
賽銭をちょろまかしてダッシュで逃げるケンジの横に黒塗りのワゴン車がつき、ケンジを車内に引きずり込んだ。そこでケンジの記憶は途切れたのである。
気がつけばトラックの中、そして今はこんな状況だというわけだ。
「よし移動するぞ、もたもたすんじゃねえ!とっとと歩きやがれ!」
ケンジたちは正面の巨大な建物の中へと歩かされていった。中はまるで刑務所のようである。非常に頑健そうなつくりだった。そのまま地下へと移動させられる。そこは学校の体育館ぐらいの広さがある部屋だった。
ガシャン
ケンジたちが全員入りきったところで入り口に分厚い鉄格子が下りてきた。
閉じ込められたのである。もう誰も逃げられない。
いったいこれからどうなってしまうのか?不安で気が気でないケンジだったが、その時隣にいた少年がケンジに声をかけてきた。
「そんな心配するなよ、大丈夫!逃げられるチャンスは必ずあるって。」
そんな言葉は慰めにもならないよ、とケンジは思った。しかし不安の絶頂の中にあったケンジにとってやはり優しい言葉はいくらか気が晴れるものであった。たとえわずかな希望であろうと今は信じて耐えるしかない。
声をかけてきた少年の名はヒロシ、彼もまた誘拐されてここに連れてこられたとのことだった。ヒロシは中学生で少し太めの体形をしている。食べることに異様な執念を燃やす彼は誘拐された日もスーパーというスーパーを渡り歩いては試食コーナーで試食品を食い漁っていた。そんなことをやってる移動中にいきなり黒塗りのワゴン車の中に引きずり込まれ、気がついたらこんな状況だったというわけだ。
同じ中学生であり同じく誘拐された身同士と言うことでケンジとヒロㇱは意気投合した。状況は相変わらず絶望的ではあるのだが、二人はなんだか希望が湧いてきたような気になった。
「しかし腹減ったなあ、くそ、あいつら飯ぐらいよこせってんだ!」
さすがは食い意地の塊のヒロシである。こんな状況でも食欲は全く衰えない。ケンジはそんなヒロシのことを少し頼もしく思った。
その時、天井がゴーという音を立てて開きだした。吹き抜けになった先に先ほどの男たちが見える。その中の一人が拡声器を使って話し出した。
「いいか~?お前ら、よく聞けよ。いまお前らはこの部屋の中に全部で100人いる。これから50の弁当箱を投げ込む。欲しかったら隣にいる奴をぶっ殺して奪い取るんだなあ~ゲヒャひゃひゃひゃあ!」
と、男が言うやいなや上空から弁当箱が降ってきた。と同時に、その弁当箱を奪い合ってケンジの周囲で熾烈な争いが巻き起こった。ある者は目玉を潰され、またある者は指を噛み千切られている。まさに地獄絵図であった。
ケンジとヒロシのそばにも弁当箱が落ちてきた。その瞬間、ヒロシの目つきが豹変した!
「ま、待て…別に争わないでも半分こすれば…」
グヴォワーー!
ケンジの言葉など全く耳に届かぬ様子でヒロシは妙な雄叫びをあげてケンジに襲い掛かった。食い意地モンスターであるヒロシは食い物のことともなるとリミッターが外れる。人間離れした力を発揮してケンジの首を両手で絞めつつそのまま壁まで押し込んでいった!
ガツン!
ケンジは後頭部を強烈に壁に打ち付けられた。もはや立っていることはできず壁際に倒れる形になる。ヒロシはケンジに馬乗りになってなおも両手で首を締めあげる。
「俺は…死ぬのか?」
そんな思いがケンジの頭をよぎったときだった、ケンジは自分の右手がヒロシの股間に届いていることに気づいた。
ブチッ!
確かに手ごたえがあった。力任せに握り込んだ手は確実にヒロシの睾丸を潰したのだ。
ヒロシの両手の力が抜けた、見るとヒロシは口から泡を吹いて白目になっている。チャンスだ!
ケンジはヒロシの体を突き飛ばすと馬乗りから脱出した。倒れ込むヒロシ。その顔面をケンジは賽銭泥棒で鍛えた脚力で思い切り蹴り上げた。
グキン!
ヒロシの首がおかしな方向に捻じ曲がる。ヒロシはバタバタと痙攣した後変ないびきをかきだし、やがてそのまま…動かなくなった。
ケンジはそばに落ちていた弁当箱を拾って開けてみた。スーパーで売っているような弁当の容器が出てきた。蓋には「幕の内弁当 480円」のラベルが張ってある。タイムセールスだったのだろうか?20%引きのシールが張られていた。
ふと周りを見渡すと、周囲の争いもどうやら終了したらしい。半数の者は座り込んで弁当を食べていたが半数の者は倒れたまま動いていない。どうやら皆死んでしまったらしい。
ケンジは涙を流しながら震える手で弁当を食べた。殺す気はなかった、決して殺したくはなかった。しかし極限状態においては人の思いなど簡単に吹き飛んでしまう。殺さなければ自分が殺されていたのだ。
「ぐぎゃふぁーははは!どうやら半分死んじまったようだなあ。いいか~おまえら?明日はまた半分の弁当箱を投げ入れる。その次の日はさらにまた半分だあ、最後に残った奴だけ生かしてやる」
狂っている。なぜ奴らはこんなことをするのか?奴らの目的はなんなんだ?
ケンジの心に暗い憎しみの炎が灯った。
(続く)
オリジナル小説
八極地獄拳
―――もう一つのケンジ―――
第一話 極悪非道!謎の組織
キキ――ッ
甲高いブレーキ音とともに大型トラックが施設の前に到着した。
ここは中国の内陸部、詳しい場所は分からないが周りは見渡す限り砂漠である。
「よし、入れ」
門衛のチェックが終わると巨大な扉がゴオオという音をたてながら開かれていった。
トラックはその中へとゆっくりと入っていく。
そのまま進んでいくと広大な中庭へ出て、トラックはそこで停車した。正面には要塞のようにそびえる建物が見える。左右には倉庫らしきもの、そして見張り台がある。
トラックの周りに数名の男たちが駆け寄ってきた。皆軍服のような制服に身を包んでいる。
「ようし出て来い」
男たちの一人が荷台の扉を開けた。中には大勢の子供たちがいた、それも皆少年たちだ。
「とっとと出てこねえか!出たらそこに並べ」
男たちの怒声が響く。少年たちは皆一様に怯えた表情だ。自分たちがなぜこんな目に合わなければいけないのか皆目見当もつかないという顔をしている。
「いいか?今日からお前らはここで暮らすことになるんだ。お前らは皆親に捨てられたか、もしくは二束三文で売られた奴らばかりだ。本来だったらゴミとなんの変りもねえんだがそれを俺たちが引き取って面倒見てやろうというんだ、ありがたく思え」
ここに集められた少年の多くは、親に捨てられたり売られたりしたものばかりだった。それだけでなく紛争で親を失ったもの、普通の暮らしをしていたのに誘拐され売られたものまでも混じっている。
そういった少年たちの中にケンジはいた。
彼の名は竹畑賢治、この物語の主人公のケンジである。
「くそ、どこなんだよここ?なんで俺がこんな目に?」
ケンジは途方に暮れていた。
ケンジは中学生である、しかし頭の方はあまりよろしくはなく分数の足し算ができない。かろうじて九九は覚えているので運が良ければ分数の掛け算には正解することもある。しかし通分というものができないので分数の足し算や引き算は壊滅的だった。
スポーツもそれほど得意というわけではないが、なぜかマラソンだけは速かった。小遣い欲しさに神社を見つけては賽銭泥棒を繰り返していたので逃げ足だけは鍛えられていたのだろう。
その日もケンジは隣のさらにその隣の町までくりだして賽銭泥棒を働いていた。
賽銭をちょろまかしてダッシュで逃げるケンジの横に黒塗りのワゴン車がつき、ケンジを車内に引きずり込んだ。そこでケンジの記憶は途切れたのである。
気がつけばトラックの中、そして今はこんな状況だというわけだ。
「よし移動するぞ、もたもたすんじゃねえ!とっとと歩きやがれ!」
ケンジたちは正面の巨大な建物の中へと歩かされていった。中はまるで刑務所のようである。非常に頑健そうなつくりだった。そのまま地下へと移動させられる。そこは学校の体育館ぐらいの広さがある部屋だった。
ガシャン
ケンジたちが全員入りきったところで入り口に分厚い鉄格子が下りてきた。
閉じ込められたのである。もう誰も逃げられない。
いったいこれからどうなってしまうのか?不安で気が気でないケンジだったが、その時隣にいた少年がケンジに声をかけてきた。
「そんな心配するなよ、大丈夫!逃げられるチャンスは必ずあるって。」
そんな言葉は慰めにもならないよ、とケンジは思った。しかし不安の絶頂の中にあったケンジにとってやはり優しい言葉はいくらか気が晴れるものであった。たとえわずかな希望であろうと今は信じて耐えるしかない。
声をかけてきた少年の名はヒロシ、彼もまた誘拐されてここに連れてこられたとのことだった。ヒロシは中学生で少し太めの体形をしている。食べることに異様な執念を燃やす彼は誘拐された日もスーパーというスーパーを渡り歩いては試食コーナーで試食品を食い漁っていた。そんなことをやってる移動中にいきなり黒塗りのワゴン車の中に引きずり込まれ、気がついたらこんな状況だったというわけだ。
同じ中学生であり同じく誘拐された身同士と言うことでケンジとヒロㇱは意気投合した。状況は相変わらず絶望的ではあるのだが、二人はなんだか希望が湧いてきたような気になった。
「しかし腹減ったなあ、くそ、あいつら飯ぐらいよこせってんだ!」
さすがは食い意地の塊のヒロシである。こんな状況でも食欲は全く衰えない。ケンジはそんなヒロシのことを少し頼もしく思った。
その時、天井がゴーという音を立てて開きだした。吹き抜けになった先に先ほどの男たちが見える。その中の一人が拡声器を使って話し出した。
「いいか~?お前ら、よく聞けよ。いまお前らはこの部屋の中に全部で100人いる。これから50の弁当箱を投げ込む。欲しかったら隣にいる奴をぶっ殺して奪い取るんだなあ~ゲヒャひゃひゃひゃあ!」
と、男が言うやいなや上空から弁当箱が降ってきた。と同時に、その弁当箱を奪い合ってケンジの周囲で熾烈な争いが巻き起こった。ある者は目玉を潰され、またある者は指を噛み千切られている。まさに地獄絵図であった。
ケンジとヒロシのそばにも弁当箱が落ちてきた。その瞬間、ヒロシの目つきが豹変した!
「ま、待て…別に争わないでも半分こすれば…」
グヴォワーー!
ケンジの言葉など全く耳に届かぬ様子でヒロシは妙な雄叫びをあげてケンジに襲い掛かった。食い意地モンスターであるヒロシは食い物のことともなるとリミッターが外れる。人間離れした力を発揮してケンジの首を両手で絞めつつそのまま壁まで押し込んでいった!
ガツン!
ケンジは後頭部を強烈に壁に打ち付けられた。もはや立っていることはできず壁際に倒れる形になる。ヒロシはケンジに馬乗りになってなおも両手で首を締めあげる。
「俺は…死ぬのか?」
そんな思いがケンジの頭をよぎったときだった、ケンジは自分の右手がヒロシの股間に届いていることに気づいた。
ブチッ!
確かに手ごたえがあった。力任せに握り込んだ手は確実にヒロシの睾丸を潰したのだ。
ヒロシの両手の力が抜けた、見るとヒロシは口から泡を吹いて白目になっている。チャンスだ!
ケンジはヒロシの体を突き飛ばすと馬乗りから脱出した。倒れ込むヒロシ。その顔面をケンジは賽銭泥棒で鍛えた脚力で思い切り蹴り上げた。
グキン!
ヒロシの首がおかしな方向に捻じ曲がる。ヒロシはバタバタと痙攣した後変ないびきをかきだし、やがてそのまま…動かなくなった。
ケンジはそばに落ちていた弁当箱を拾って開けてみた。スーパーで売っているような弁当の容器が出てきた。蓋には「幕の内弁当 480円」のラベルが張ってある。タイムセールスだったのだろうか?20%引きのシールが張られていた。
ふと周りを見渡すと、周囲の争いもどうやら終了したらしい。半数の者は座り込んで弁当を食べていたが半数の者は倒れたまま動いていない。どうやら皆死んでしまったらしい。
ケンジは涙を流しながら震える手で弁当を食べた。殺す気はなかった、決して殺したくはなかった。しかし極限状態においては人の思いなど簡単に吹き飛んでしまう。殺さなければ自分が殺されていたのだ。
「ぐぎゃふぁーははは!どうやら半分死んじまったようだなあ。いいか~おまえら?明日はまた半分の弁当箱を投げ入れる。その次の日はさらにまた半分だあ、最後に残った奴だけ生かしてやる」
狂っている。なぜ奴らはこんなことをするのか?奴らの目的はなんなんだ?
ケンジの心に暗い憎しみの炎が灯った。
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