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初めまして宮沢雅宏と申します。
中国の西安において馬賢達老師と
田春陽老師より中国伝統武術である
通備拳を学んでまいりました。
このブログには武術に関する理論やエッセイを掲載してまいります。

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沈墜勁やら震脚やらを誤解していたという話

現在は武術や格闘技の情報というものはインターネットを通して容易に得ることができるようになりました。しかし、インターネットが広まる前はそういった情報は専門の雑誌や書籍ぐらいからしか得られませんでした。私も発勁というものの仕組みがよくわかっていなかった時期はそういった媒体を通して発勁というものの知識を得ていったわけですが、そういった時にまず間違いなく出くわすものが沈墜勁・十字勁・纏糸勁という、俗に三大勁論と呼ばれるものです。この三大勁論を提唱したのは武壇の徐紀氏であり、結論から言ってしまえばこの三大勁論は飽くまで武壇に特有の概念でありあらゆる門派の発勁に対して普遍的に当てはめられるものではありません。しかし、自分がやっている門派の情報が思うように手に入らない駆け出しの初心者だった頃の自分は、発勁というものは何でもこの三大勁論で説明できると思い込んでしまいました。今回はその中でも沈墜勁というものと、それに付随する震脚というものについて、私がどれほどアホな誤解をしていたのかということを述べてみたいと思います。
さて、まずは私がこの沈墜勁というものをどのように誤解していたのかということを述べてみたいと思います。私はこの沈墜勁を「身体を深く沈めることで強い力を発揮するもの」と思い込んでいました。体を深く沈めると両腿にはかなりの力感を感じることになります。自分一人だけで型をやっている限り、「なんだかすごい力が出ているぞ」という感覚にとらわれたとしても無理ないのかもしれません。さらに八極拳の場合は震脚という足で地面を踏み鳴らすことで打撃力を上げるという技法があります。足で地面を踏み鳴らすと「見かけの体重」というものを上げることができます。見かけの体重とは、例えば体重計の上に乗って足をドスンと踏み鳴らすと体重計の針は一瞬だけ実際の体重の数値を超えた数値を示しますが、この一瞬だけ増えた体重のことを「見かけの体重」といいます。
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ご存知のように体重が重い人ほど強力な打撃を放つことができます。つまり、震脚で見かけの体重を増やしつつ体を深く沈めて沈墜勁を発揮すれば強力な打撃を放つことができる、これぞ八極拳の打撃だ!などと思い込んでいたわけですが、いや~アホ丸出しですな。
それでは今までの考え方は何が間違っていたのでしょうか?
そもそも沈墜勁というものは,「重心を沈めてしっかりとした基礎力を身に付けること」(BABジャパン刊 発勁の秘伝と極意 p30より)なのだそうです。打撃力を上げる技術ではなかったわけです。そして基本的に打撃というものは横に立っている相手に対して放つものです。ということは強力な打撃を放つためには水平方向の推進力を増幅させなければならないわけです。身体を深く沈めると地面と体の重心との距離が縮むので確かに取っ組み合いになったときに身体を安定させるという効果があります。しかしそれだけでは横方向の推進力とは無関係です。さらに、型を演じるときにやたら低い姿勢を盲信する人がいたりしますが、もちろん足腰の鍛練という点ではそういったこともありだと思いますが、実は、実際に打撃を放つということになるとあまりにも深く沈んだ姿勢というものはかえって打撃の威力を落としてしまいます。八極拳で強い打撃を放つためには横方向への飛び出しの勢いが重要なのですが、ある程度腰の位置を高くした状態と低く沈めた状態とどちらが横方向への飛び出しに向いているでしょうか?これは、サドルの高い自転車とサドルの低い自転車のどちらがこぎやすいか?を考えれば明らかなことでしょう。
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そして震脚で見かけの体重を増やすということですが、いくら見かけの体重を増やしたところでその力の方向は下に向かっているわけです。横方向への推進力とは無関係です。
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それでは強力な打撃を放つための正しい方法とはどのようなものか?
まず一つ言えることは位置エネルギーを利用するということでしょう。例えばジェットコースターのようなレールの頂上からボールを転がした場合、頂上で得られた位置エネルギーは全て水平方向への運動エネルギーへと変換されます。
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このことを利用して例えば八極拳の冲捶を放つ時に、踏み込むとともに体の重心が滑らかなカーブを描くようにすれば体の重心が持っていた位置エネルギーを水平方向の推進力に転換することができます。そのためにはしっかりと身体を支えられる足腰が必要であることは言うまでもないでしょう。
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そして踏み込んだ足が着地するときに震脚をするわけですが、この時に地面を掻き込むように震脚すると、前足で身体を引き寄せる力と地面からの反発力を利用して横方向への推進力を増幅することができます。ちなみにこのような足の使い方を八極拳では蹍歩と呼びます。
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つまり震脚とは横方向への体の推進力を増すためにやるものであり単に地面を踏み鳴らすものではないということです。と言いますか力任せに地面を踏み鳴らすような動きは体に悪いのでやめたほうがよいです。
武術の技法についてかつての私のような誤解をしている人はまだ多いのかもしれません。今後はそういった誤解がどんどんはれていってほしいと思います。
(参考書籍 手塚一志著 ピッチングの正体)
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武術者必見の書!手塚一志著 ピッチングの正体

今回は我々武術を修練するものにとって大変参考になる本を紹介したいと思います。
それがこちら,「手塚一志著 ピッチングの正体」です。

野球の本じゃねーか! とツッコミが来そうですが,はっきり言ってモヤっとしたことしか述べられない巷のアホな武術解説書よりも断然に有用です。
この本ではどのようにすれば効率的に身体を使いつつ速球を投げることができるのかということを物理的,運動生理学的に分かりやすく解説しており,つまり「発勁」についてとても具体的に述べられているわけです。巷のイマイチ何言ってるのかわからない発勁解説の記事やら動画やらとは大違いです。考えてみれば剛速球を放つことも猛烈な威力の突きを放つことも身体で発生させた運動量を末端の手まで伝えるという行為は同じです。発勁というものは身体で発生させた運動量をいかにロスなく目標まで伝達させるかというテクニックなわけですからピッチングとの共通性があっても不思議なことではないでしょう。
さて,この本でまず押さえておきたいのは二重振り子構造と呼ばれる概念です。これは振り子が振れているときに振り子の中ほどを急停止させることで振り子が加速するというような運動構造のことで,この本ではこの二重振り子構造の動きをきつく戒めています。
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実は私もこの二重振り子構造の動きをしていた時期がありました。例えば突きを打つときに踏み込んだ前足に急ブレーキをかけることで反動で拳が飛び出すというような動きをしていたことがあるのです。
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この二重振り子の動きというものはブレーキをかけるまでに発生させた運動量を他の部位へと伝えているだけなので,その運動量は本来ならばブレーキをかけずに発生させることのできた運動量と比べると当然少ないものになってしまうわけです。さらにブレーキをかけるために使われた部位に負荷がかかり故障を誘発しやすくなるというデメリットもあります。
それでは身体にできるだけ大きな運動量を発生させるためにはどうすればよいかというと,この本では並進運動を重視しています。
並進運動とは体の重心を移動させることです。
途切れることなくスムーズに目標に対して並進運動をすること,これが剛速球を生み出す秘訣になるわけです。
この剛速球を放つようなフォームで突きを打ったならばどうなるか?もちろん凄まじい威力の突きが打てます。
本の最後でこの剛速球フォームでのパンチの打ち方を解説してたりしますが,これぞまさに発勁ですね。
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とにかくここでは取り上げきれないような武術にとって秘訣ともいえることが山ほど紹介されているので,ぜひ皆さん一度手に取って読んでみてくださいね。

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